花の旅人

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〈京都編〉第四話 奥嵯峨の緑の草庵 「祇王寺」

2018.10.22

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前回訪ねた大覚寺から徒歩25分。大覚寺の塔頭寺院であり、苔の美しい寺「祇王寺(ぎおうじ)」へ。
祇王寺は嵐山から離れた奥嵯峨と呼ばれる、観光客もまばらな静かなエリアにたたずむ、ひっそりとした小さなお寺です。

嵐山ならではの美しい竹林にふと現れる小道の先に山門があります。

趣のある苔むした門をくぐると、一面緑の世界が。

祇王寺は竹林と楓に囲まれた平家物語* に登場する歴史ある尼寺。
もともとは往生院という寺院の境内にありましたが、衰退をたどり、一時は廃寺となりました。しかし、残された墓と仏像が大覚寺によって保管され、再建の道をたどり現在に至ります。

* 平清盛の寵愛を受けた白拍子(歌舞の芸人)の祇王が清盛の心変わりにより、都を追われて母と妹ともに出家し、入寺したとされる。(平家物語 巻第一 祇王)

紅葉の穴場ともいわれる祇王寺ですが、夏は苔と木々の緑が見事。この寺には20~30種の苔があるといわれています。

こちらの庭のお手入れは職員の方がなさるとのこと。苔の管理はプロでも難しく、苔の種類によって好む日照や湿度が異なるため、これだけの苔を美しく保つのは、並大抵のことではないと思われます

竹林が風を遠ざけ、木々がつくりだす木陰と木漏れ日。庭に流れる小川がこの苔を育んでいるのでしょう。

5分もあれば一周できてしまう程の空間ですが、一歩足を踏み入れた途端に一面の緑に包まれるこの庭には、心が和み、時が経つのを忘れてしまう魅力があります。
夏の京都の暑さはかなりのものですが、それでもこの緑を目指して伺ってよかったと思える美しい庭でした。
夏の濃緑、秋の紅葉、冬の雪景色、春の芽吹き……それぞれの季節がつくりだす、異なる光景を見るために、またこの場所を再訪したいと願いつつ、奥嵯峨野を後にしました。

次回は緑を探しに京の街中へ。

祇王寺

京都市右京区嵯峨鳥居本小坂町32
最新情報など詳細については祇王寺のWEBサイトをご覧ください。