旬花百科

日本一の花市場、大田市場に集まる旬の花や最新品種をご紹介。
知っていると花選びが楽しくなるお話。

第十五話 「ヒマワリ」

2019.07.16

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「レモネード」「マヤダブル」

実はバリエーション豊富な夏の花

ヒマワリの基本情報
□出回り時期(切り花):通年(最盛期は6月~9月)
□香り:なし
□学名:Helianthus annuus
□分類:キク科ヒマワリ属
□和名:向日葵(ヒマワリ/ヒュウガアオイ)、日輪草など
□英名:Sunflower
□原産地:北アメリカ

ヒマワリの花言葉

「あなただけを見つめる」「憧れ」
「Long life (長寿)」「Adoration (崇拝)」など

「サンリッチオレンジ」

ヒマワリの歴史

ネイティブアメリカンの貴重な栄養源として紀元前から栽培されていたとされる、北アメリカが原産地と考えられる植物です。
やがてスペインにヒマワリが伝わりますが、その経緯はコロンブスがアメリカ大陸を発見した際にヨーロッパへ持ち込んだという説や、インカ帝国でヒマワリを太陽神のシンボルとして崇めていたことから中米一帯に広まったものをスペイン人が持ち帰ったという説など諸説あります。
16世紀初頭になると農業利用のための実験としてマドリード王立植物園で栽培が始まりますが、ヒマワリが国益につながるとして約100年に渡って門外不出とされました。
そして、17世紀になるとフランス、ロシアへと広まり、日本には17世紀末に伝来したとされています。当時はその姿から「丈菊(じょうぎく)」と呼ばれていましたが、その性質から「日廻り」と呼ばれるようになり、背の高い花の総称ともいえる葵の字が付いた「向日葵」と表記されるようになりました。

「ビンセントクリアオレンジ」

画家とヒマワリ

フィンセント・ファン・ゴッホの代表作のひとつとして知られている「ひまわり」ですが、南フランスのアルル滞在時に、ほぼ同じ構図で(花びんに生けたヒマワリ)1888年から1889年の間に7点が制作されています。

ヒマワリをモチーフとした理由は諸説あり、ファン・ゴッホにとってこの花が南仏の太陽やユートピアの象徴だったからという説や、アルルでは油を取るためにヒマワリが栽培されていて、とても身近な花だったからという説も。

また、この絵が同じ構図で複数描かれたのは、芸術家が共同生活を行う場所としてファン・ゴッホが計画していた『黄色い家』を飾るためだったとも、絵画の技法を研究するためだったとも言われています。

日本では伊藤若冲(1716-1800)が1757年頃 から1760年頃にかけて、代表作「動植綵絵(どうしょく さいえ)」3幅の中で「向日葵雄鶏図(ひまわり ゆうけいず)」を、晩年には京都・信行寺の天井画「花卉図」の中の一つとしてヒマワリを描いています。

江戸琳派の作品にもヒマワリはたびたび描かれ、酒井抱一(1761-1829)が「十二ヶ月花鳥図貼付屏風」の七月の一曲として「向日葵に蟷螂(とうろう)」を、その弟子である鈴木其一(1795-1858)はほぼ原寸大のヒマワリを描いた「向日葵図」を残しました。

他にも葛飾北斎(1760?-1849)が88歳の時に版画ではなく、肉筆画として描いた「向日葵図」があります。

和洋を問わず、これらの画家が描いたヒマワリは私たちが現在目にしているヒマワリとほぼ同じであるのが見て取れます。
ちなみに現在ではこうした画家たちの名前が付けられたヒマワリ(ビンセント(シリーズ)、ゴッホのひまわり、ゴーギャンのヒマワリ、モネのヒマワリ、マティスのヒマワリなど)が出回っています。

ヒマワリと太陽

以前は「日廻り」と書かれていたこともあるように、ヒマワリは太陽の方向を追いかけて咲く、といったイメージが持たれています。これはつぼみができ始めた頃のヒマワリは光屈性(植物などの成長方向が変化する性質)により光の方向によく動くことに由来しますが、実はこの時、動いているのはつぼみではなく茎です。
茎には伸長成長を促す成長ホルモン(オーキシン)があり、これが光に反応して、伸びることで開花前のヒマワリの花が動いているように見えるのです。
しかし、開花した後は花の動きは止まります。これはヒマワリに限ったことではなく、多くの花が同じように光に向かって咲きますが、他の花にくらべてひと際大きく、色と形が太陽をイメージさせるので、太陽に向かって回る花といったイメージが付いたのでしょう。

「サンリッチフレッシュレモン」

ヒマワリの名所

マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレンが主演した1970年公開のイタリア・フランス・ソ連の合作映画「ひまわり」(原題: I Girasoli )は名作として名高い作品ですが、エンディングシーンに現れる、どこまでも続く画面いっぱいのヒマワリ畑がこの映画に強いインパクトを与えています。
この場面は世界有数の食用ヒマワリの産地、ウクライナで撮影されましたが、日本国内でも100万本を超えるヒマワリ畑が存在しています。

なよろひまわり畑 (北海道名寄市)約500万本
大空町ひまわり畑 (北海道網走郡)約200万本
網走市大曲湖畔園地 (北海道網走市)約150万本
北竜町 ひまわりの里 (北海道雨竜群)約150万本
三ノ倉高原ひまわり畑 (福島県喜多方市)約250万本
あけのひまわりフェスティバル (茨城県筑西市)約100万本
若狭小浜 恵のひまわり畑 (福井県小浜市)約100万本
世羅高原農場 (広島県世羅郡世羅町)約110万本
長崎鼻リゾートキャンプ場 花公園 (大分県豊後高田市)120万本

「レモネード」

ヒマワリのお手入れ

水を好む花ですが茎には産毛があるため、水が濁りやすく、茎も傷みやすいので毎日水替えと切り戻しを行うのがおすすめです。
花が大きいものほど水下がりが起きやすいので、葉はできるだけ取ってください。
花びんの水が少なすぎると、水下がりを起こしますので注意が必要です。

花毎でご紹介しているヒマワリのお話

水上多摩江さんが描いた向日葵の花
二十四節気の花絵 第九十四話 大暑の花絵「向日葵」

気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニック「二十四節気の花あしらい」
第二十五話 夏至の花あしらい「檸檬色のひまわり」
第二話 大暑の花あしらい「ヒマワリ」

取材協力:株式会社 大田花き、庄内花き生産組合連絡協議会